肝と胆、この臓器は血液の貯蔵、体内の解毒、新陳代謝などの作用を行うとされ、現代医学の肝胆の作用に近いものがあります。
五臓六腑の理論では、「人が体を休めているとき、血は肝に帰り、人が活動す時に血は肝から出て、必要とされている場所に赴く」と表現されています。
肝と胆は大脳の働きのうちでも、特にいらつきや落ち込み、寝つきが悪いなどの情緒面と関係が深いとされます。
さらに筋肉と爪を養い、目に栄養を補給し、視力を高め、全身の生理機能のリズム(消化吸収、睡眠、月経、体温、血圧、血液循環、排便など)を調整し推進します。
胆汁は体内を浄化します。肝胆の調和によって決断力が強化されます。
この肝と胆の働きは、精神的なストレスや夜更かし、飲酒や喫煙、食生活の不摂生、運動不足、過労、怠惰などの生活習慣や生活環境の不備によって、大きく害されます。
(1)肝主疎泄:肝(かん)は疎泄(そせつ)を主(つかさど)る。
疎泄とは、滞らず伸びやかにさせることを意味します。
①気の疎通をよくする。
肝の疎泄機能が正常であれば、気の昇降出入の運動が順調に行われ、臓腑、器官、経絡の活動が正常にできます。
「気は血の師」(気がなければ血は動かない)であるため、肝の疎泄機能は血の運行を正常に行わせる役目も有します。
②情志活動。
人の精神情志活動は、肝気と密接に関係します。(心にも関与する)
肝気の疎泄が正常であれば、外界からの刺激(種々のストレスなど)に対して正常な反応を行うことができます。
肝は最もストレスを受けやすい臓腑として知られ、肝の疎泄機能が失調していると、抑鬱、いらいらなどの精神症状の他に、さまざまな身体症状があらわれます。
③胆汁の分泌と排泄。
肝と胆は互いに表裏のなしており、胆汁の分泌排泄は肝の疎泄機能と密接な関係があります。
肝の疎泄機能が失調すると、胆汁の分泌に異常があらわれ、黄疸、口が苦い、黄水の嘔吐及び胸脇張痛などの症状があらわれます。
(2)肝蔵血:肝は血を蔵(ぞう)す。
①血液を貯蔵し、出血を防ぐ。
蔵血機能の低下により、月経過多、不正性器出血、及び他の出血症状がらわれます。
②血液量の調整。
肝には血量調節機能があり、人体内の各部分において、活動状態の違いに応じて常に血量を調節しています。
休息や睡眠時には血液の一部は肝に貯蔵され、活動時には必要とする器官に送られます。
(3)肝主筋、其華在爪:肝は筋を主り、その華(はな)は爪にある。
筋とは骨についている腱、筋膜、靭帯などを指します。
肝は血を筋に送って栄養を与え、正常に機能が行われるようにしています。
このため、肝血が不足すると筋に対する栄養が不足し、痙攣、しびれ、ひきつけなどが起こります。
肝血の盛衰は爪にあらわれます。
(4)肝開竅干目:肝は目に開竅(かいきょう)する。
目は五臓六腑すべてと関係があり、特に肝と密接な関連を持っています。
視力低下、目のかすみなどに対しては、よく肝の弁証を行います。